BtoB製造業のWebサイト運営では、最もわかりやすい成果指標として 「問い合わせ」 が使われるケースが一般的です。営業に直接つながる行動であり、社内説明もしやすいというのもあるのでしょう。
しかし、「問い合わせ」だけを唯一のKPIにすると、改善の方向性を誤りやすい のも事実です。製造業の購買プロセスは長期化・複雑化しており、問い合わせに至る前の“中間行動”を可視化しなければ、Webの成果は正しく判断できません。本記事では、問い合わせ数だけに依存する評価がなぜ危険なのかをひも解き、製造業のWebで本当に見るべき四つのキーイベント、そして成果につながるゴール設定の方法を解説します。
問い合わせ前の行動を正しく捉えるには、どこで離脱が起き、どのポイントを改善すべきかを体系的に把握する必要があります。そこで、製造業サイトのコンバージョン率(CVR)改善に役立つ項目をまとめた資料もご用意しています。Web施策の精度を高めたい方は、ぜひご活用ください。
【チェックリスト付き】BtoB製造業が取るべきコンバージョン率改善戦略:入門編
BtoB製造業におけるWebマーケティングでは、「問い合わせ(リード獲得)」を唯一のゴールに設定してしまうと、施策の成果やユーザーの関心度を十分に可視化できず、改善のヒントを得られにくくなってしまうのです。それはなぜか、その理由には大きく3つあります。
BtoB製造業の製品は単価が高く、導入判断にも大きな責任を伴うため、比較検討の期間が長期化しやすいのが特徴です。BtoB製造業の購買にはこれらが共通しています。
そのため、問い合わせだけを見ていると改善ポイントを見落としてしまいます。改善のヒントは問い合わせ“前”の行動に表れやすく、中間指標の可視化が不可欠です。
BtoB製造業では、製品やサービスを購入する際に技術者、調達担当、経営者など多くの人が関わります。それぞれの立場によって注目するポイントが異なることもありため、1人の行動だけで判断するのが難しいのです。
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関与者 |
重視ポイント |
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技術者 |
スペックや性能、品質の妥当性 |
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調達担当 |
価格・納期・供給リスク |
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品質保証担当 |
規格適合性や保守・管理面の信頼性 |
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経営層 |
ROI、投資対効果、事業戦略との整合性 |
このように、ユーザー像が多様なため、単純な問い合わせ数やPVだけではニーズを読み取れないことが多く、ページ滞在時間、導線の踏み方、資料閲覧など複数の行動を組み合わせて判断する必要があります。
顧客が自社の問題を認識し、それを具体的な課題として検討し始めるまでには時間がかかる可能性が高いです。製造業のプロセスや技術は複雑で、複数の関係者が意思決定に関与するため、以下のように段階的に進むことが一般的です。
つまり、問い合わせに至る頃には検討の8割が終わっていることも少なくありません。
製品のライフサイクルが長く、既存システムや周辺設備との整合性も考慮されるため、検討が熟するまでに半年〜1年かかるケースもあります。
BtoB製造業では、問い合わせ数だけでは判断できない検討の進み具合を把握するために、以下のような“問い合わせと一緒に見るべき指標”を確認しましょう。よく使われる中間指標と、その指標を見る理由をまとめました。
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指標 |
見る理由 |
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・主要ページの閲覧数 ・滞在時間 |
興味関心の深さや、どの情報が検討に効いているかを把握できる |
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・資料ダウンロード数 ・閲覧数 |
比較検討の段階に進んでいるか、検討度合いの高さを確認できる |
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・導線遷移率 (各ページ間の移動) |
どこで離脱しているかが分かり、改善ポイントを特定しやすくなる |
| ・動画視聴率 | 技術内容や仕組みの理解がどこまで進んでいるかを測れる |
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・メール開封率 ・クリック率 |
見込み客との関係性の強さや、継続的な関心の有無を判断できる |
こうした行動を合わせて見ることで、「問い合わせが少なくても実は検討が深く進んでいる」というケースも判断できるようになります。指標選びに悩むBtoB製造業は、次のセクションで紹介する“押さえるべき四大キーイベント”を参考にしてください。
ユーザーの“検討が進んでいる証拠”として、特に重要なイベントが以下の4つです。これらは、問い合わせ数だけでは見えない「興味関心の深さ」や「購買意欲」を示す重要指標であり、確実に計測・分析しておくべき行動と言えるでしょう。。
ホワイトペーパーダウンロードは、BtoB製造業において見込み顧客の興味を測る大切な方法です。ホワイトペーパーとは、製品の詳細や業界の専門知識をまとめた資料のことで、ダウンロードは検討意欲が一定以上あるユーザーに限られるため、非常に質の高いリード取得につながります。
また、ダウンロード時には連絡先の入力を伴うため、顧客情報の収集にも適しています。さらに、GA4を使えば「どの資料を」「どの経路で」ダウンロードしたのかを詳細に追跡でき、ユーザーが何に興味を持っているかを把握しやすくなります。
ホワイトペーパーのダウンロードを最大化するためには以下のポイントは押さえておきましょう。
| ◻︎ | ダウンロードへの導線がファーストビューにある |
| ◻︎ | ダウンロード資料が「製品軸」「課題軸」で揃っている |
| ◻︎ | LPが長すぎて離脱を生んでいないかを確認する |
| ◻︎ | GA4で資料ごとのダウンロード数を計測できるようにする |
特定ページの閲覧は顧客の興味を示すサインです。顧客がどのページをどのくらい見ているか、どのコンテンツに興味を持っているかが把握できれば、顧客がどの製品やサービスに関心があるのかを理解しやすくなります。特に注視すべき3種類のページと“行動の意味”を押さえておきましょう。
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ページの種類 |
ユーザー行動が示す意味 |
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製品ページ |
具体的な機能や仕様を確認し、機能面の深い検討に入っている段階 |
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事例ページ |
自社での導入イメージを持ち始め、活用シーンを想像している段階 |
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価格ページ |
社内の稟議や予算感の確認に入り、導入の現実性を評価し始めた段階 |
例えば、ある製品ページがよく見られている場合、その製品に関連する成功事例を共有することで顧客のニーズに合った提案へ繋げられ、問い合わせや商談のチャンスを増やすことができます。
動画コンテンツは、情報を視覚的に伝えるため、顧客の関心を引きつける効果があります。特にBtoB製造業は、顧客の理解を深め具体的な利用イメージを持たせることが簡単ではないため、テキストや画像だけでは伝えにくいニュアンスを伝える方法として動画はまさに適していると言えるでしょう。
GA4などを使い動画の視聴データを分析し、顧客がどの部分に最も関心を持っているかを把握できれば、問い合わせの増加につなげられます。
これらの分析結果は、問い合わせ増やコンテンツ改善に直結します。
複数のページを回遊したうえで問い合わせに至る行動は、顧客の検討度が高まっている場合が多いです。
BtoB製造業では製品が技術的かつ高額投資になりやすいため、ユーザーは意思決定前に徹底した情報収集を行います。その結果、問い合わせ前には必ずといっていいほど複数ページを経由します。
BtoB製造業でよく見られる検討フローの一例は、「製品ページ」 →「 事例ページ」 → 「価格ページ」 → 「問い合わせ」です。それぞれのページは次のような役割を持ち、顧客の意図を読み解くヒントになります。
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ページ種類 |
顧客が知りたいこと |
|---|---|
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製品詳細ページ |
仕様・機能・対応範囲を確認し、自社要件とマッチするかを判断 |
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導入や成功事例ページ |
実績・効果・具体的な運用イメージを把握し、信頼性を確認 |
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価格情報ページ |
予算感を把握し、稟議・比較検討の準備に進む段階 |
|
競合比較ページ |
他社との違いを確認し、差別化ポイントの理解を深める |
特に「競合比較」まで閲覧される場合、ユーザーは最終選定に向けた材料を揃えている状態であり、非常に確度が高いと判断できます。
GA4であれば、これらの複雑な訪問経路を詳細にトラッキングすることが可能です。「ユーザーがどのページを訪問しているか」「どのような順序で情報収集をしているか」「どこで離脱しやすいか」を把握できます。これにより顧客がどのコンテンツに興味を持っているか、どの情報が問い合わせやコンバージョンに繋がっているかを分析することができます。
これらのイベントをしっかりと追跡し、分析することで、BtoB製造業は顧客に合ったマーケティング施策を展開し、効果的なコミュニケーションを実現できます。
BtoB製造業では、「問い合わせ」だけをゴールにすると判断を誤るケースが多く見られます。実際には、検討のかなり早い段階で複数の行動が発生しており、そこに着目することで最終的な問い合わせ増加につながります。ここでは、成果を出すためのゴール設定を 3つのステップ に整理し、GA4での活用方法とともに解説します。
まず、購買プロセスを可視化することが必要です。これには、顧客が製品を認識し、情報を収集し、最終的に購入を決定するまでの一連の流れを図式化(カスタマージャーニー)するのが良いでしょう。
製造業の意思決定は部署横断・長期化しやすく、どの段階でどの行動が生まれるのかを把握しておくことが、正しいKPI設定の出発点になります。
<製造業の典型プロセス>
GA4を使えば、これら各段階におけるユーザー行動をトラッキングし、「どの情報が検討を前進させたか」「どこで離脱しているか」を把握しやすくなります。
次に、可視化したプロセスに基づき、各ステップに対応するイベントを設定します。以下は製造業サイトでよく設定されるイベント例です。
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フェーズ |
イベント例 |
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認知 |
サイト訪問、ブログ閲覧 |
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情報収集 |
製品ページ・事例ページの閲覧 |
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比較検討 |
資料ダウンロード、動画視聴 |
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稟議 |
価格ページ閲覧 |
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最終 |
問い合わせ |
例えば「事例ページ閲覧 → 価格ページ閲覧」の順番が増えてくれば、比較検討〜稟議のユーザーが増えていることが読み取れます。
GA4でイベントを設計しておくと、「どのコンテンツが検討を前に進めているか」を明確に判断でき、改善施策の優先順位付けにも役立ちます。
営業・技術・マーケティングでは、知りたい情報が異なります。そのため、部門ごとにレポートを分けて作成すると、社内で“共通言語”が生まれ、改善が加速します。GA4の分析機能を活用して、どのマーケティング施策が最も効果的だったのか、どのチャネルが問い合わせを生んでいるのかを明確にし、全体的なプロセスの最適化につなげましょう。
ただし、GA4の管理画面だけでは「指標は取れているが、どう読み解けばいいか分からない」「部門ごとに見るべきポイントが整理できない」と感じるケースも少なくありません。そのような場合は、GA4のデータをLooker Studioというツールで整理するのがおすすめです。問い合わせ以外のキーイベントも含めて可視化することで、ゴール設計が正しく機能しているかを判断しやすくなります。
実際に、BtoB製造業向けに「GA4 × Looker Studio」でどのように指標を整理・可視化すべきかをまとめた記事もありますので、「レポート設計まで落とし込めていない」「何をKPIとして見ればよいか迷っている」という方は、あわせて参考にしてみてください。
【無料診断】BtoB製造業のためのGA4活用術!Looker Studioでできる簡単サイト分析
これらのステップを踏むことで、BtoB製造業は効率的かつ効果的なゴール設定を実現し、競争力を高めることができます。GA4のような分析ツールを活用することで、デジタル時代におけるビジネスの成功を支援します。
先ほど「ゴール設定のコツ」を説明しましたが、その際によくある"失敗"も一緒に把握し、事前にミスを防ぎましょう。失敗例を紹介するとともに、回避策も解説します。
BtoB製造業において、顧客の購買プロセスを可視化することは、GA4を使って顧客行動を分析する上で非常に重要ですが、詳細に可視化しようとするあまりフローが複雑になりすぎることがあります。これは、各ステップの役割が不明瞭になり、どのステップが顧客の意思決定に影響を与えるのかが分からなくなるという問題を引き起こします。
例えば、顧客が製品情報を得てから問い合わせに至るまでのプロセスをあまりにも細かく分けすぎると、データ分析の際にノイズが多くなり、重要なインサイトを見逃す可能性があるのです。
まず、顧客の購買プロセスを大まかに捉え、主要なステップのみを特定することで分析の焦点を絞ることができます。そして、顧客が実際に問い合わせを行う前に、どの情報やステップが決定を左右するのかを理解し、そのポイントをフローの中で強調すると良いでしょう。さらには、フローをできるだけシンプルに保ちつつ、顧客の意思決定に直接関与する要素を含めることで、効果的なデータ分析を可能にします。
各ステップに対応するイベントを設定する際、トラッキングの範囲が広すぎたり、逆に狭すぎたりして、正確なデータが得られないことがあります。これは、GA4でのイベントトラッキングが柔軟である反面、設定次第でデータの精度に大きな影響を与えてしまうためです。
例えば、BtoB製造業では、問い合わせまでの顧客の行動が複雑であることが多く、その各ステップを適切にトラッキングしないと、どの部分が効果的でどの部分が改善が必要かを見誤る可能性があります。
これにより、顧客が問い合わせに至るプロセスを正確に把握し、どのステップが効果的であるか、またどのステップが改善の余地があるかを明確にすることができます。特に、問い合わせフォームの送信や見積もり依頼など、具体的なビジネス成果に直結するイベントを重視することが重要です。
レポートを作成しても、それを部門間で共有せず、データに基づいた改善策が講じられないケースがあります。この問題は、データがサイロ化され、各部門が独自の判断基準に頼ることで発生します。
GA4を活用すれば、顧客の行動パターンや問い合わせのトレンドを詳細に分析することが可能ですが、これらの情報が適切に共有されないと、全体的なマーケティング戦略や営業戦略に反映されず、ビジネスチャンスを逃すことになるのです。
さらには部門横断的なミーティングを設定し、データに基づいたディスカッションを行い、全社的な視点での改善策を検討することが重要です。これにより、データに基づく意思決定が可能となり、問い合わせへの対応力を強化することができます。
これらの失敗例を防ぐことで、BtoB製造業における効果的なゴール設定と、問い合わせの増加につなげることができます。
本記事では、BtoB製造業において「問い合わせ(リード獲得)」だけを成果とせず、ユーザーの関心度や施策の効果を捉える指標を多角的に設計する重要性を解説しました。とはいえ、最初からすべてを追うと混乱しやすいため、まずは紹介した主要イベントから段階的に取り入れるのが現実的です。
最初の一歩としては、「資料DL」と「問い合わせ」の2つに絞って計測を開始し、ユーザーがどの程度関心を示しているのかを把握するとよいでしょう。慣れてきたら、「動画視聴率」や「ページ滞在時間」などの追加指標も取り入れることで、サイト全体の改善ポイントがより見えやすくなります。
さらに、サイトのコンバージョン率を見直すためのチェックリスト付き資料もご用意していますので、「どこから改善すべきかわからない」とお悩みの方は、こちらもあわせてご活用ください。
【チェックリスト付き】BtoB製造業が取るべきコンバージョン率改善戦略:入門編