BtoB製造業のサイトでは、いまやアクセスの5〜7割がスマートフォンというケースも珍しくありません。にもかかわらず、次のような課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。
本シリーズでは、製造業BtoBサイトにおけるモバイル最適化を、構造的な課題と実践的な改善策の両面から前編・後編の連載で整理します。前編では、「なぜBtoB製造業のサイトがスマホで成果を失っているのか」その構造を分かりやすく解説します。
あわせて、Webの基盤となるコンバージョン率の考え方や改善ポイントを整理したチェックリスト付きの資料もご用意していますのでぜひご活用ください。
【チェックリスト付き】BtoB製造業が取るべきコンバージョン率改善戦略:入門編
まず押さえておきたいのは、「スマホ流入は増えているのに、成果が比例していない」という現実です。多くの企業では、
「スマホ対応はしているのに、成果が出ない」。その原因を考える前に、まず確認すべきことがあります。それは、スマホでサイトを見ているのは誰なのか? そして何をしに来ているのか? という点です。
製造業のBtoB企業では、スマホは“発注の場”ではありません。多くの場合、検討の入口であり、候補に入れるかどうかを判断する場です。この前提を理解することが、モバイル設計の出発点になります。
ここでは、以下について具体例を交えながら分かりやすく整理します。
【スマホ閲覧者の主な役割】
|
役割 |
主な目的 |
検討段階 |
|
現場・技術担当者 |
課題に関係あるかの確認 |
初期 |
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購買・調達 |
取引候補として問題ないかの確認 |
初期〜中期 |
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管理職 |
要点確認・判断材料の確認 |
中期 |
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商社・SIer |
提案可否の確認 |
初期 |
BtoB製造業サイトのスマホ閲覧で最も多いのが、現場・技術系の担当者です。
たとえば、次のようなシーンなどで見られます。
しかし、この層の目的は「今すぐ発注」ではありません。確認しているのは、
などと、「関係ありそうかどうか」を判断しているだけの場合が多いです。ここで「関係なさそう」と判断されると、その後の比較検討の土俵にすら上がれません。
購買・調達担当者も、実はスマホ閲覧比率が高い層です。PCで本格的に比較する前に、まずスマホで最低限の確認を行います。確認項目は主に次の通りです。
この段階では技術説明よりも、
といった企業としての安心材料が重視されます。たとえば、実績一覧が見当たらないだけで、「経験が浅いのでは」と判断される可能性もあるので注意が必要です。
部長・工場長・事業責任者クラスも、意外にスマホでサイトを確認しています。ただし目的は明確で、じっくり読むことはありません。
といった短時間での要点確認が中心です。この層が見ているのは、
これらの価値を数分で伝えられるかが重要です。特に、トップページやサービス概要を見ただけでそれが分からなければ、深掘りされることなく終わる可能性が高くなります。
見落とされがちですが、商社・販売代理店・SIer・施工会社などの間接的関係者もスマホでサイトを見ています。
たとえば、顧客から「このメーカーって信頼できるの?」と聞かれ、その場でスマホ検索して確認するケースも少なくありません。このように顧客から急に質問を受けた際に、
を答えられるように準備しているのです。このとき、分かりやすい用途説明や実績など情報が整理されていないと、「提案しづらい会社」と判断される可能性もあります。
BtoB製造業で重要なのは、「スマホで見ている人=今すぐ問い合わせる人」ではない、という点です。
しかし同時に、
という意味で、意思決定プロセスに確実に影響を与える存在でもあります。
スマホは、検討の土俵に乗るための入口です。つまりスマホ最適化とは、「直接CVを取る施策」だけでなく、候補から外されないための最低条件でもあるのです。
次に理解すべきは、BtoB製造業におけるスマホ閲覧は、PCとは前提がまったく異なるという点です。
PCでは「腰を据えて比較・検討する」行動が中心ですが、スマホでは「短時間で判断する」行動が中心になります。目的・姿勢・判断基準が違うにもかかわらず、PC前提の情報設計をそのまま縮小すると、どれだけ情報量が多くてもCVにはつながりません。
ここでは、スマホ閲覧に特有の6つの行動特性を、具体例とともに解説します。
スマホで製造業サイトを見ているユーザーの多くは、まだ「詳細比較フェーズ」にはいません。
たとえば現場担当者が、「外観検査の自動化で不良率を下げられないか?」と検索し、複数の企業サイトを開いたとします。この段階で行っているのは、技術資料の精読ではありません。
確認しているのは、
といった、「検討する価値があるかどうか」の確認です。
スマホ閲覧では、文章を最初から最後まで読む人は多くありません。
実際の行動は、
という流れがほとんどです。製造業サイトにありがちな、「技術背景の長い説明」や「専門用語が連続する段落」「文章中心の構成」は、ほぼ読まれていない可能性があるといってもいいでしょう。
そのため、重要なのはこれらのようにスマホで評価される構造にすることです。
×「当社の画像処理技術は〜(長文)」
○「外観検査を自動化し、不良率を最大30%改善」
このように、成果や価値を先に示す構造が有効です。
というケースがほとんどでしょう。この時点で探しているのは
といった後に使える資料や情報です。そのため「お問い合わせはこちら」だけでは弱く、“持ち帰れる価値”を用意しているかどうかが重要になります。
スマホ検索では、製品名や型番よりも、課題・用途ベースのキーワードが多くなります。
そのため、
にしてしまうと、検索意図とズレが生じます。スマホ流入を増やしたいなら、「製品ページ」だけでなく「課題解決型コンテンツ」が不可欠です。
ここでいうクロスデバイスとは、スマホ・PC・タブレットなど、異なる端末を行き来しながら情報収集や比較を進めることです。
たとえば、
スマホはあくまで検討の起点です。ここで「関係なさそう」と判断されれば、PCで再訪されることはほとんどありません。
逆に言えば、スマホで
スマホ閲覧は、集中できる環境とは限りません。
といった状況で見られることも多いでしょう。そのため、集中しづらい環境では
BtoB製造業におけるスマホ閲覧は、「技術を深く理解する場」ではなく「検討に値するかを判断する場」です。
この前提に立つと、
これらに発想が変わります。スマホ最適化とは、単なる画面対応ではありません。検討プロセスの中で、スマホが担う役割を設計し直すことです。それが、BtoB製造業のサイトで成果を上げるための本質的な改善ポイントです。
ここでは、BtoB製造業サイトで実際によく見られるモバイル非最適の失敗パターンを整理します。
単なる「デザインの問題」ではなく、
まで踏み込みます。多くの企業が「スマホ対応はしている」と考えています。しかし実際には、“表示できているだけ”で、成果につながる設計になっていないケースが非常に多いのが現実です。
これから紹介する7つは、マーケター・代理店のどちらにとっても「あるある」です。同時に、最も改善余地が大きいポイントでもあります。
スマホでもPCと同じ構成の技術説明を掲載しているケースは、BtoB製造業サイトで最も多い失敗のひとつです。「レスポンシブ対応はしている」ものの、情報の順番や読み方までは最適化されていない企業が多いのではないでしょうか。
スマホ閲覧者は、「技術を理解するため」ではなく、「自社に関係があるかを判断するため」に見ています。
製造業では技術を強みにしたい企業が多く、決して悪いわけではありませんが、社内ではこうした声がよく出ます。
「うちは技術力が強みだから、きちんと説明したい」
「省略すると誤解されるのではないか」
その結果、営業資料や展示会パネルの構成をそのままWebに転用します。
スマホのファーストビューで、製品名や型番を最優先に打ち出しているケースも多く見られます。
製品名や型番は、すでに指名検索している層にしか意味を持ちません。一方、スマホ流入の多くは「工程の課題」や「用途」で検索しています。
制作段階でよく起きるのがこの対立です。
マーケティング側:「課題から入ったほうがいい」
製品部門側:「まず製品名を出さないとブランディングにならない」
双方の意見がまとまらないと、最終的に“無難な折衷案”になり、用途も型番も中途半端に配置されます。結果として、どの層にも刺さらないファーストビューになりがちです。
製造業サイトではスペック情報が重要です。しかし、PC前提のレイアウトをそのまま掲載しているケースが多く見られます。
スマホでは「読めない情報=存在しない情報」です。拡大しないと読めない情報は、ほぼ読まれていません。技術力や性能が強みであっても、それが視認できなければ読まれる前に閉じられてしまいます。
特に比較検討フェーズでは、スペックの視認性がそのまま検討対象入りするかどうかを左右します。特に技術力が高い企業ほど、伝え方の問題で機会損失を起こしています。
社内では、「スペックは全部載せているから問題ない」「詳しい人は拡大して見るはずだ」などと考えられがちです。
制作後はPCで確認して公開してしまい、 スマホ実機で“読み切れるか”まではチェックされていないケースも多いでしょう。その結果、正確な情報が、比較検討に使われていない状態が生まれています。
すべてのページでCTAが「お問い合わせ」だけになっているケースです。
BtoB製造業では、スマホ閲覧時点で予算や導入時期が固まっていないケースが大半です。
営業側からよく出るのがこの意見です。
「資料DLだけのリードは質が低い」
「本気なら問い合わせするはず」
結果としてハードルの低いCVが用意できず、そもそもの接点数が増えません。
製品情報や技術情報が、PDFでの閲覧を前提に設計されているケースです。
スマホでは、まずHTML上で概要を理解できることが重要です。PDFはあくまで補足資料という位置づけが適しています。
「営業資料があるから、それを載せれば早い」 「Web用に作り直す時間がない」という判断が起きがちです。結果として、“営業目線では十分、ユーザー目線では不十分”な状態になります。
問い合わせフォームがPC利用を前提に設計されているケースです。
検討初期段階で詳細情報まで求めると、 完了率は大きく下がります。 最適化すべきは入力項目数ではなく、完了率です。
営業側の本音的には、「顧客情報はどうせ聞くなら最初に全部取りたい」「後からヒアリングするのは非効率だ」という考えがあるため、完了率の議論が後回しになります。
しかし実際には、最初に情報を取りすぎることで入力途中離脱が増えています。
スマホ経由のCVを過小評価しているケースです。
スマホは成約の場というより、「検討開始の入口」であることが多いです。短期の問い合わせ数だけで評価すると、実際の貢献度を過小評価してしまいます。
「スマホはCV率が低い、だから改善優先度は下げよう」などとマーケティングが正当に評価されないことが多いです。
しかし実際には、スマホが検討の起点になっている可能性があります。その結果、入口の改善が進まず、機会損失が続きます。
7つの失敗の本質を改めて整理してみましょう。
|
失敗パターン |
表面上の問題 |
本質的なズレ |
|
技術説明の縦流し |
長文で読みにくい |
判断材料が最初に提示されていない |
|
型番訴求 |
製品名が目立つ |
課題起点で設計されていない |
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読めない表 |
小さくて見づらい |
スマホ体験が考慮されていない |
|
問い合わせ一択 |
CVが少ない |
検討段階に合った導線がない |
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PDF前提 |
離脱が多い |
Webで理解させる設計になっていない |
|
長いフォーム |
完了率が低い |
情報取得を優先しすぎている |
|
評価不足 |
予算がつかない |
スマホの役割を定義していない |
これらに共通しているのは、
です。BtoB製造業において、スマホは“成約の場”ではなく、“検討開始の入口”です。この前提を共有できるかどうかが、 モバイル最適化の分かれ道になります。
本記事では、製造業BtoBサイトがスマホで成果を出せない理由を、ユーザー行動とよくある失敗パターンから整理しました。
スマホは発注の場ではなく、検討の入口です。しかし多くのサイトはPC前提の設計のままで、自社との関連性や次のアクションが瞬時に伝わらず、候補から外れてしまっています。
必要なのはデザイン調整ではなく、スマホを営業プロセスのどの段階で機能させるのかを再定義することです。ここを見直すことが、成果改善の出発点になります。
株式会社コンテナは、Web業界で約15年の制作実績を持ち、サイト設計からコンテンツ制作、運用改善まで一貫して支援しています。モバイルサイト構造の設計、UX改善など、この記事で紹介したすべての要素を“実践できるチーム”として、多様な業種のWeb戦略を支えています。
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【チェックリスト付き】BtoB製造業が取るべきコンバージョン率改善戦略:入門編